2009年1月10日土曜日

日本経済50の大疑問 (講談社現代新書) (新書)

日本経済50の大疑問 (講談社現代新書) (新書) 森永 卓郎 (著)

デフレ、不良債権、構造改革、国債暴落、ペイオフ対策、中国の脅威……日本経済はなぜダメなのか?いくつかのテーマについての著者独自の視点で解説&コメントしていますが、その中でも特に面白かったテーマはこれです。



・不良債権はなぜ、いつまでたっても増えつづけるのか?
・アメリカは本当に市場主義で強くなったのか?
・日本の経済政策は誰の意見で決まっているのか?
・「中国の脅威」に日本の製造業は対抗できるのか?
・経済成長は、本当にしなければならないのか?

著者の論点としてはかなり一貫していて、若干抜粋しますが、以下の通りです。

経済に底はなく、無限に落ちていく可能性がある。
もしも、意図的に落としていこうと思ったら、いくらでも落ちていくし、最終的にはゼロになるまで落ちるというのが基本的な特徴だと言える。
この底割れの恐怖を理解していない人が、信じられないほどたくさんいるのが、悲しいことに日本の現状だ。
日本経済の景気の底が割れてしまうかどうかについては、これから先の経済政策がカギを握っているが、政府も多くの識者たちも、基本的には「市場原理主義」の立場でこれからの経済の舵取りを行おうとしている。
彼らのコンセンサスは、効率の悪い企業をどんどんつぶさなければ日本経済は立ち直れない、だから不良債権処理を断行して、強い企業だけを残していこう、ということだ。
その改革が遅れれば遅れるほど、日本経済の回復は遅れる。しかし、本当にそうなのだおうか?私はまったく間違っていると思う。
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それほど目新しい論点でもなかったのですが、「経済成長は、本当にしなければならないのか?」というのが著者の結論のように受け取れました。

20年前の経済と比較して、1人当たりのGDPは飛躍的に増加したけど、「幸せ指数」って、あまり変わってないよなあということに疑問を持って以前このブログでコメントしました。
「2008年7月19日「アジアで最も豊かな国」から転落した日本・・・どう思う? 」http://yamadaprivate.blogspot.com/2008/07/blog-post_19.html


結局、市場原理主義というか経済成長至上主義に大きな疑問を持っているという著者ですが、その代わりとなる指針に関しても明確に提案してもらえるともっと良かったなあ・・・と思いました。

また、余談ですが、数年前に読んだ本ですが、
もうひとつの日本は可能だ (文春文庫) (文庫) 内橋 克人 (著)
と論調はほぼ同じです。小泉構造改革による行き過ぎたアメリカ型資本主義への批判と人間が尊重される社会の実現を提言する。価値観は共有できます。