2008年8月30日土曜日

村上春樹、河合隼雄に会いにいく (新潮文庫)


村上春樹、河合隼雄に会いにいく (新潮文庫)

村上春樹の作品はほぼ全て発売と同時に読むくらいの大ファンですが、いくつかの企画モノに関しては読んでいませんでした。この対談もその部類なのですが、河合隼雄と言う人は、分析心理学(ユング心理学)を日本に紹介した学者として知られていて、日本におけるユング心理学の第一人者です。(去年亡くなられました。)

読んでみると結構面白かったです。対談なので深い内容にまでは踏み込まないのですが、例えば、

夫婦というのは一種の相互治療なので、相手を理解しようと思ったら、理性だけで話し合うのではなく、井戸を掘らなければならない。つまり、地味でしんどい苦しみを共有しなければならない。愛し合っている二人が結婚したら幸福になるという、そんな馬鹿な話はない。そんなことを思って結婚するから憂鬱になるんですね。何のために結婚して夫婦になるかといったら、苦しむ為に井戸掘りをする為なんだというのが結論なんです。
自分は不幸だ不幸だと嘆いてまわりに迷惑をかけるくらいならさっさと離婚したらいい。それと、何度も結婚する人は井戸掘りを拒否している人なんですね。そういう人は、しんどくなると井戸を掘らないで、あちこち別の人を探しているけれど結局、同じような人を相手にしていますよ。

アメリカ人の夫婦なんかを見ていると、一緒にいる間はすごく仲が良くていつもベタベタしているけれど、別れるとなると、子供がいようなどうであろうが、パッと別れる。それは、自分達の関係がどこかで本物でないという意思があるから意識的にベタベタしていないと不安で仕方がない。

・・・う~ん。深い!かと言って、世の中を達観して儚んでいるわけでもないところがご立派。河合隼雄さんが発言するからこそ許されて、尚且つ深みがありますね。いわゆる重症患者さんを相手にした「心理療法&セラピスト」の大御所です。
ちなみに、ここで出てくる「井戸掘り」は、村上春樹の「ねじまき鳥クロニクル」の物語に出てくる一種のキーワードです。

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